きっとキミも恐竜が好きになる。 『ぴのらぼ キミの町にも恐竜、いる?』 感想

ぴのらぼ-おいしい虫さんたち-みんなでやりたい虫クイズ-


ぴのらぼ-絶対に見つからないいきものさん-隠れているやつらを見つけだせ-


に続く、「ぴのらぼ」シリーズの第三弾、
キミの町にも恐竜、いる?


が本日2020/07/27に発売されました。

「ぴのらぼ」シリーズとは、いわゆる生きもの雑学本の一つです。
文章全てとイラストの半分をカルロ・ピノ氏が、イラストのもう半分を八重沢なとり氏が手掛けています。

このシリーズの特徴として、大きく三点が挙げられます。

・実際の写真を一切使わずに、全てイラストだけで構成されている
元々は虫が苦手な人でも楽しめるようにという配慮でしたが、以降の動物を主に扱うシリーズでも徹底されています。イラストも魅力的なものばかりで、単純にイラスト本としても楽しむことができます。
また、「こんな生きもの本当にいる/いたのか…?」と疑ってしまうような生きものも多数紹介されているので、読者自身が自主的に実際の姿を図鑑やネットで調べてみるきっかけにもなると思います。

・クイズ形式で楽しく読み進められる
生きもの一匹につきクイズが一つずつ用意されており、「文字を読んで知識を得るターン」と「自分の頭で考えてみるターン」が交互に来るようなイメージです。
ひとりでじっくり考えてもよし、複数人でワイワイ盛り上がってもよし。退屈せずに読み進められるように工夫が凝らされています。
クイズ自体も「ありそうだなあ」と思わせられる秀逸な選択肢が多く、大人でも余裕で苦戦する難易度です。勘で答えるしかないようなクイズもありますが、ページを隅から隅までよく読むとヒントが見つかることもあります。

・図鑑レベルの知識が、平易な言葉にかみ砕かれて説明されている
生息地や名前の由来といった基本的な話から、外見や生態などの込み入った話、時にはちょっと余談とも言えるようなエピソードまで、非常に分かりやすく記されています。
少し難解な話になることもありますが、先ほどのクイズの解説も兼ねているので「クイズの詳しい答えを知りたい」という好奇心が取っ掛かりになってすらすら読めます。

これらに共通して言えるのは、
「元々、生きものに全く興味がなかった人向けに特化してつくられている」
ということです。

かわいらしいタッチでまとめられたイラストの数々は、読者が元々持っていたそれらへの抵抗を払拭してくれます。
絶妙な難易度のクイズは、それら生きものたちの生きざまや取り巻く環境、それらが持つ歴史について思いを巡らせるきっかけを与えてくれます。
それらによって刺激された好奇心は、読みやすい言葉で纏められた解説がしっかり満たしてくれます。

生きものの本ではあるものの、生きものに全く関心が無い人にこそ読んでほしい。
そういう意味では、ちょっと変わったシリーズとも言えるかもしれません。


そして「ぴのらぼ3」ことぴのらぼ-キミの町にも恐竜、いる?-も、そんな「ぴのらぼ」シリーズの意思をしっかり受け継いだ一冊となっていました。
以下、なるべくネタバレしないように気を付けながら、イチオシポイントを語っていきます。




■キミの町にも恐竜、いる?
本書のコンセプトとして「もし、ヒトと恐竜が共存する町があったら」というテーマが掲げられており、本書に登場する恐竜すべてに関して「現代の人間界で活躍する姿」が描かれています。
思わずふふっと笑ってしまうような微笑ましいものから、ちょっとドキドキしてしまうぐらい魅力的な光景まで。著者の持つ柔軟な発想力が大いに発揮されており、ひとたび読めば大いに好奇心を刺激されるでしょう。
筆者は首長竜が大好きなので、プレシオサウルスの「もしも」のイラストを見て数分妄想に浸ってしまいました。流石にちょっとそれは素敵すぎる。


■アナタの夢も、実現するかも?
恐竜たちに関する解説では、「現在最も有力とされている説に行きつくまでの研究の流れ」が特に重点的に説明されている印象を受けました。
「元々は爬虫類の仲間だと思われていたが、実は〇〇の仲間だった」
「元々は飛ぶことができないとされていたが、実は飛ぶことができたのではないか」など、旧い学説がより新しい学説によって更新される過程が詳しく記されています。
著者の、
「恐竜に関する研究は、日々新たな発見によって覆されていくものであり、もしかしたら、あなたの『こうだったらいいな』も未来には現実となっているかもしれない」
ということを伝えたいという意図を強く感じます。
読んでみた後は是非あなたも「いいな」を考えてみてください。
ティラノサウルスが本当は火を吹いてたら楽しいな」「プレシオサウルスは本当は陸上に住んでいたかもしれない」ぐらい突飛なものでも全然いいと思います。


■ワタシはこの本のここがスキ
以下、細かいポイントを箇条書きでつらつらと。

・妙に雰囲気がゆるい「特徴」欄
「じわる」という表現が一番しっくりきます。謎の面白さがある…
・クイズの難易度がかなり高い
結構じっくり考えたんですが、13問しか正解できませんでした。「ぴのらぼ」シリーズの中でも屈指の難易度だと思います。
・イラストが上手い
特にイクチオサウルスアマルガサウルスは必見です。色使いと躍動感がスゴイ。
・「はじめに」の文章が秀逸
「うわ、この本絶対面白い」と思わせるだけの力がある名文。Amazonとかでここだけでも読めたらいいのに。
・レイアウトが読みやすく、読みごたえもある
比較する意図はありませんが、「ぴのらぼ1」と比べると文章に下線が引かれていたり、イラストと文章がページごとに分けられていたり、より読みやすいように工夫されています。全体的に文字数も増え、ボリュームもたっぷりです。
・章分けの仕方がちょっとおもしろい
ふつう、アイウエオ順だったり古生代三畳紀ジュラ紀白亜紀…みたいな順番で掲載していくものだと思うんですが、本書では「大きさ順(それもアバウトな)」。「もしヒトと共存していたら」という側面をより押し出していて面白いです。


〇おわりに

「生き物には全く興味がない」
「ちょっと自分の世界を広げてみたい」

「ぴのらぼ」シリーズは、そんな人にこそおススメしたい一冊です。なぜならば、筆者もまた、生きものには(水棲生物以外には)まったく興味がなく、そしてこのシリーズを通して世界が広がった人間の一人だからです。

少しでも気になった方がいらっしゃいましたら、是非お手に取ってみてください。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。